築40年以上のマンションは大規模修繕工事?建て替え?鉄骨造ALC版マンションの大規模修繕工事見学会をレポート

目次

築年数が経過したマンションでは建替えと大規模修繕工事どちらを行うべきでしょうか。マンションに長期間住んでいる方は十数年ごとに実施される大規模修繕工事の経験があるかと思いますが、築年数が経過したマンションでは共用部の修繕だけではなく、それまでは修繕で済んでいた場所や設備の更新・改修・改良工事なども行われるようになります。築40年を過ぎると建て替える事例もあるなか、築40年を超えたマンションではどのような大規模修繕工事が行われるのでしょう。

(一社)神奈川県建築士事務所協会マンション等の大規模修繕業務特別委員会の主催によって実施された大規模修繕工事見学会は、築48年ということに加え珍しい鉄骨造ALCのマンション管理組合様にご協力いただき実施され、弊社も施工会社として参加させていただきました。

当日は今回の大規模修繕工事に携わる関係会社の方の他、(一社)神奈川県建築士事務所協会員の方などを含め55名の方にご参加いただき、下記のスケジュールに加えそれぞれで質疑応答など大変有意義な意見交換が行われました。

【大規模修繕工事見学会概要】
主催:一般社団法人神奈川県建築士事務所協会マンション等の大規模修繕業務特別委員会
名称:「鉄骨造ALC版のマンションの大規模修繕工事~工事見学会と改修設計のポイント~実例講習会」
当日のプログラム概要:
1.設計監理者より大規模修繕改修計画、設計及び工事監理について解説
2.施工者・メーカーによる工法や材料の説明
3.工事現場見学
4.質問会

珍しい改修事例の紹介が多くあったこちらの工事見学会の当日の様子をレポートします。

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築48年のマンションで行われた大規模修繕工事



大規模修繕工事の実施予定時期や箇所毎の修繕周期は長期修繕計画書によって計画されていますが、大規模修繕工事前に建物調査診断を行い、劣化具合や修繕積立金の予算に合わせて修繕箇所を具体的に決める必要があります。今回大規模修繕工事見学会を実施させていただいたこちらのマンションでは2014年に建物調査診断を実施し、長期修繕計画を作成した結果、2014年から数回に分けて修繕が行われ、下記内容にて大規模修繕工事が進められてきました。

2014年:玄関ドアの更新工事
2015年:給水設備の更新、外構周りフェンスの更新
2019年:大規模修繕工事
①外壁改修工事
②シーリング工事
③外壁塗装工事
④バルコニー床防水工事
⑤バルコニー手摺更新工事
⑥窓サッシ更新工事

大規模修繕工事を経験されたことのある方は、基本的な大規模修繕工事で行われる内容に加えて、1回目~2回目の大規模修繕工事ではあまり行われない設備の更新工事などが実施されていることにお気づきでしょうか。それだけではなく、鉄骨造ALC版の外壁改修工事ということもあり、他のマンションではあまり行われない工事の紹介・見学を中心に当日のプログラムが組まれていました。今回の大規模修繕工事見学会のポイントをご紹介します。

 

大規模修繕工事のポイント


鉄骨造ALC版の外壁改修


足場架設工事で使用されたアンカー(赤丸部)

こちらのマンションは鉄骨造ALC版のため、足場架設工事も一般的な鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造とは異なります。多くの場合、足場架設では足場を建物に固定するために外壁に穴を開け “打ち込み型アンカー”というものをハンマーで打ち込むことで固定しますが、今回の工事ではコンクリ―トの強度の関係でアンカーの種類をALC版用と接着型の併用に変更したうえで、風の影響を受けやすい最上段を接着型アンカーで固定しています。また、外壁補修では一般的に行われる外壁塗装やタイルの張替えではなく、“ピンネット工法”および“ネット貼工法”という特殊な工法で改修が行いました。

ネット貼工法の様子


手摺更新工事



新設された手摺

足場架設工事なしでは改修を行うことが難しいベランダ手摺や窓サッシの更新工事は、大規模修繕工事と同じタイミングで実施。足場架設には大きな費用がかかりますので大規模修繕工事と同時に行うことで修繕積立金を効率的に活用されていました。

ベランダ手摺の更新工事では十分な強度を保つため、足場架設後に古い手摺を撤去し、鉄骨に溶接されていた手摺の支柱を掘り出して劣化状態を確認、その結果を基に手摺の新設方法を決定したのだそう。調査を行った結果、実際にベランダに設置されていた手摺自体の劣化は見られたものの、支柱根元の溶接部の強度に問題がなかったため支柱に新しい手摺を溶接することで強度を保った新しい手摺を新設したのだそうです。更新前には実際に更新した後にどのような外観になるかの想像が難しいため、3Dの合成画像を基に協議が行われました。

新設の手摺と既存手摺のイメージ画像

 

窓サッシ更新工事



ベランダ手摺更新工事と同じく足場架設が必要となる窓サッシ更新工事では、既存のサッシ枠を撤去するのではなく既存のサッシ枠を新しい窓枠で覆うカバー工法を採用。

従来のカバー工法では既存のサッシ枠を覆う形で新しい窓サッシを取り付けるため、新しいサッシの厚みで縦横8㎝~11㎝程度開口部が狭くなってしまうのがデメリットでしたが、今回採用された“新カバー工法”ではサッシの厚みが4~5㎝程度と、開口部の大きさを大きく変えることなく新しいサッシを取り付けることが可能に。鉄骨造ALC版マンションへの取り付け事例はまだ実績が少なく希少な事例のため、検討を重ねた上で実施されました。


玄関ドア更新工事




足場架設を必要としない玄関ドアの更新工事は2014年に実施され、大規模な地震が発生した場合を想定した耐震ドア『デレマース』が採用されました。『デレマース』はドアの中央部分が避難扉として使用できるようになっており、万が一大規模な地震が発生し建物のゆがみで玄関ドアが開かなくなってしまった場合でも、避難扉から出られる仕組みになっているのだそう。また、避難扉は施錠することができるため、いわゆる火事場泥棒から資産を守ることもできます。

デレマースの詳細は東海ドア株式会社HPにてご確認ください。

 

大規模修繕工事見学会の様子


1.大規模修繕改修計画、設計及び工事監理についての説明


まず始めに、設計監理者(有)ノマドの永島優子様より大規模修繕改修計画についてや、今回の大規模修繕工事の内容に至った経緯などについて説明が行われました。建物調査診断の結果を基に予算を踏まえた計画や、工事箇所策定の経緯を予め聞いてもらうことで、見学者の方も建物の状況を知った上で工事見学をしてもらえるように工夫しました。


2.
工法・材料についての説明


続いて、今回の修繕計画に関わる施工者及び使用材料メーカーより、施工のポイントや材料の特徴について説明が行われました。こちらも事前に説明を行うことで、分譲マンションでは珍しい鉄骨造ALC版の建物ということや、築50年近いマンションの改修前の劣化状態を踏まえた施工方法の策定経緯といった情報を知った上で工事を見学してもらうようにしました。建築工事全般を施工した当社では鉄骨造ALC版の足場架設や外壁の補修方法、アスベスト調査について現場代理人の田近、一級建築士の小野寺よりご説明させていただきました。


3.
大規模修繕工事現場見学



工事概要説明の後、大規模修繕工事が行われている実際の現場を見学して回りました。マンションで行われるのは珍しいピンネット工法の見学をはじめ、各種更新工事が行われた箇所でメーカー各社よりそれぞれの商品等の説明が行われました。



質疑応答でもマンションの大規模修繕工事ではあまり行われることのない改修工法についてや、築48年のマンションということもあり修繕積立金についての質問が飛び交いました。

 

ヨコソーでは管理組合様向けの大規模修繕工事見学会も随時実施しております




今回参加させていただいた(一社)神奈川県建築士事務所協会主催の大規模修繕工事見学会では関係会社の方を対象としておりましたが、当社では大規模修繕工事前のマンション管理組合様やビルオーナー様を対象とした、大規模修繕工事の『工事見学会・相談会』も実施しております。随時受け付けており、お申し込みいただいてから開催場所(工事現場)や日程を調整し実施しています。

例えば、
・規模が同等、現在想定している工事内容が似ている工事現場を見学したい!
・大規模修繕工事中の住環境を知りたい!
・実際に工事を実施している現場代理人に直接質問したり話を聞きたい!
・なるべく住んでいる場所の近くの工事現場で見学会をしてほしい!
など、ご要望に沿った場所で見学会を行えるように調整いたします。

※調整に期間を要する場合やご希望に添えない場合もございますがご了承ください
※お申し込み・ご相談内容や工事状況によりやむなくお断りさせていただく場合がございます
※東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県)エリアでの実施を予定しています

大規模修繕工事前のお客様、大規模修繕工事について知りたい方、理事・修繕委員になられたばかりの方など、いつか必ず実施しなければならない大規模修繕工事についてより知識や理解を深める機会となれば幸いです。

マンション大規模修繕工事見学会・相談会について詳しくはこちらのページでご紹介しています。

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