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マンションのサッシ交換をするには?注意点とポイント
マンションのサッシ交換は個人でできる?
マンションのサッシ(窓)は建物のデザインを統一し、美観や防犯・防音性能を保つ役割を持つ共用部分です(マンション標準管理規約第22条)。建物全体や他の住戸に長期的にマイナスの影響を及ぼす可能性がある修繕等についてはあらかじめ管理組合理事長に承認申請するよう定められており、サッシについても原則として区分所有者が個人で勝手に交換することは「できない」としています(マンション標準管理規約第17条)。
サッシ交換の周期は30~45年が目安です。
劣化が進んだ部分は大規模修繕工事で修繕を行い、3回目以降の大規模修繕工事で一斉に交換することになります。その際にサッシの機能をグレードアップしたり、網戸や鎧戸、窓の手すり、共用廊下側の窓面格子、防犯雨戸などを取り替えたりします。費用は修繕積立金から支出します。
しかし、一斉交換のタイミング以外でサッシに不具合が生じたらどうすれば良いのでしょうか。例えば家具を移動する際にぶつけてしまった・地震の影響で窓枠がゆがんでしまった・台風で飛ばされてきたものがガラスに当たりひびが入った―などの外的要因による不具合の修繕や交換も、次の大規模修繕工事まで待たなくてはいけないのでしょうか。
このような場合は交換することが「できます」。サッシのゆがみや腐食、ガラスのひび割れを放置すると大変危険です。管理組合に相談して早期に修繕工事または交換工事を行い、安全で快適な住環境を整えましょう。破損が自然災害による場合、組合が加入している保険を使うことができます。
それでは、「不具合はなくても居室をリフォームしたい」「結露予防に断熱改修をしたい」場合はどうでしょうか。
断熱性能を高めるために現在の単板ガラスを複層ガラスに交換したり、サッシの内側に二重窓を設置するのは専有部分の工事です。
管理組合に
①工事内容・期間
②工事業者名
③工事業者が出入りする時間
を届け出て実施することができます。費用は自己負担となります。
出典:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「住宅省エネルギー技術講習テキスト」
一方でサッシ全体の交換はマンションの共用部分に当たるため、理事会の承認が必要です。現在と異なる部材を用いるものは色彩や形状、位置、そして防犯・防音性の低下の恐れがないか理事会が確認します。面格子やルーバーの工事を行う際も同様です。
そして問題がないと認められたら工事を行うことができます。
このような手続きを経て個人でサッシを交換することは可能ですが、まずは管理組合に相談し、長期修繕計画を確認してみましょう。
サッシ交換が1~2年のうちに実施されるのであれば、そのタイミングを待っても良いかもしれません。交換はまだまだ先だと分かれば、個人での交換を検討しましょう。
マンションサッシ交換で用いられるカバー工法
サッシの交換で既存の窓枠を付け替えるには外壁を壊す必要があり、大変大掛かりな工事となります。
そこで、一般的に採用されるのが外壁はそのままで現在の窓枠の上に新しい窓枠を覆い被せて取り付ける「カバー工法」です。
この工法は足場の設置が不要で室内から施工でき、窓1個所につき3時間程度で完了します。騒音やほこりの発生も少なく済むのがメリットです。ただし、新しいサッシの厚みが加わる分、窓枠が一回り小さくなってしまいます。
出典:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「住宅省エネルギー技術講習テキスト」
カバー工法によるサッシの交換費用は、窓の大きさやサッシのグレードによって異なります。サッシ枠にはアルミ製や合成樹脂製、木製などがあり、ガラスも単板ガラスや複層ガラス、真空ガラス、ガス封入ガラスなどさまざまな種類から選べます。
一概にはいえませんが、参考価格は1個所当たり施工費込みで15万~ 40万円と見積もることが多いようです。
【参考】
サッシ改修のメリットと注意点
サッシ改修のメリット
住宅の中で熱の出入りが一番多いのは、窓。
冬は室内の温かさが窓から逃げ、夏は窓から外気の熱が入ってきてしまいます。マンションでもサッシを改修して断熱性能を高めることで、快適性と経済性、そして防災性を兼ね備えた“健康住宅”に近づけることができます。
ここでサッシをグレードアップするメリットを一つずつみていきましょう。
1.“健康住宅”の実現
●家の中の温度差を小さくすることができます。室内の空気が極端に冷やされたり暖められたりする部位が少なくなり、冷たい空気が足元に溜まる「コールドドラフト現象」を抑制し、温度差からくる「ヒートショック」の危険を減らせます。
●室内外の温度差による結露の発生を減らし、アレルギーを引き起こす原因となるカビやダニの発生を抑制します。壁体内(へきたいない)結露は気づかないうちに押し入れなどの木質部分を劣化させます。
2.快適性の向上
気密性の高いサッシは音も遮断します。窓をきちんと閉めれば、あまり音を気にせずスポーツ観戦やホームパーティを楽しむことができ、交通量の多い幹線道路沿いのマンションでも車の騒音が軽減されます。夜間の話し声が響かないよう近隣住戸への配慮ができ、ペットのいる暮らしも快適になるでしょう。
出典:よこはま健康・省エネ住宅推進コンソーシアムHP
3.経済性の向上
冬は家中を効率よく暖めることができ、夏は冷房が効きやすくなります。暖冷房に必要なエネルギーを抑制した結果、光熱費の削減と環境負荷の軽減が期待できます。
4.防災性の強化
大規模災害の発生で電気・ガスなどのインフラが止まった場合でも気密性の高い住戸は一定の室温を保ちやすく、在宅避難による日常生活を最低限維持できます。
サッシ交換の注意点
個人でサッシを交換する際に注意したいのは、まず、「外観の統一」と「防犯・防音の確保」です。
・サッシのメーカーや型番指定の確認
・外観の統一性を損なわない色やデザインを選ぶこと
施工会社とともにマンションの管理規約や使用細則を確認しましょう。
次に確認しておきたいのは、保証範囲と期間についてです。
サッシ交換の後、大規模修繕工事で他の住戸がサッシを一斉に交換する時にご自宅のサッシをもう一度交換するか、それとも交換しないのか、あらかじめ扱いを決めておきましょう。
保証(アフターサービス)についても注意が必要です。個別に交換したら、その工事施工会社から提供される保証は工事完了日からスタートします。大規模修繕工事のタイミングに関わらず個別の保証期間が適用され、メンテナンスの責任の所在も大規模修繕工事の施工者と異なることがあります。施工前に管理組合に相談しておきましょう。
騒音や振動が少ないカバー工法でも、工事実施の際は他の区分所有者がわかるよう工事期間と作業時間、工事内容を掲示板に掲出するなどの配慮が必要です。両隣や上下階の住戸の方には、工事着手の前に直接あいさつしておくと良いでしょう。
知っておきたい「熱貫流率」
次の表は、大部分がガラスで構成されている窓等開口部の「熱貫流率(U値)」です。
出典:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「住宅省エネルギー技術講習テキスト」
熱貫流率とは「壁の両側の温度を1℃としたとき、1時間あたり1㎡を通過する熱量」のことで、熱の通りやすさを示す指標です。数値が小さいほど熱が通りにくく断熱性が高いことを表します。
ここに示された通り、断熱性能をアップするには単板ガラスを二重ガラスやトリプルガラス、さらに、ガラスの間にガスを封入した複層ガラスに交換することが有効です。建具(窓枠)の仕様も、スチール製サッシや初期のアルミサッシをアルミ樹脂複合サッシや樹脂製サッシなどに改修すれば、断熱性能がさらにアップします。
ただし、高機能・高性能になるほど価格も高くなります。地域の気候や環境に合ったグレードを選びましょう。
知っておきたい「断熱等性能等級」
出典:よこはま健康・省エネ住宅推進コンソーシアムHP
住宅の断熱性能は「等級2」から「等級7」までの六つのランクがあります。2025年以降は新築住宅・非住宅の建設に省エネ基準適合が義務付けられ、最低限の基準が「等級4」に、2030年以降は「等級5」になります。今後の住まい選びではマンションも省エネ性能が重要視されます。つまり、マンションの断熱性能を高めることは、マンションの資産価値の向上にもつながるのです。
出典:国土交通省住宅局
サッシを交換する際、国や自治体から改修工事費用の補助を受けられる場合があります。
補助金交付申請の要件や受付期間が異なるので、工事を依頼する施工会社に問い合わせてみましょう。
【参考】
環境省 先進的窓リノベ2024事業
まとめ
マンションのサッシ交換は共用部分に該当するため、基本的に個人で自由に行うことはできませんが、自然災害による不具合は個別に交換することが可能です。「健康住宅」づくりを目指したサッシの断熱改修も、管理組合の承認を受けて実施するケースが増えています。サッシ改修には健康促進や防音対策、省エネ効果など多くのメリットがあります。
大規模修繕工事を検討する際は、マンションの資産価値向上に貢献するサッシ改修に取り組みましょう。