注目トピック
マンション外壁塗装の費用相場とは?注意したいポイント
(出典:国土交通省 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック)
外壁塗装の役割は、第一にマンション建物を紫外線や熱、風雨から保護することです。さらに、塗装の色合いでマンションの印象が変わることから周辺環境との調和を図るまちづくりの役割も担っています。
外壁がすべてタイル張りの建物でも共用廊下や階段、ベランダなどは塗装で仕上げており、定期的な補修や塗り替えなどのメンテナンスが欠かせません。
今回の修繕成功Magazineでは大規模修繕工事の要といえる外壁塗装工事に焦点を当て、費用の相場や塗り替え周期、塗装の種類についてみていきます。工事期間中にマンション居住者が注意するべき点も説明します。
マンションの外壁塗装にかかる費用相場
■ベランダの利用制限
(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)
マンションの大規模修繕工事で外壁塗装にかかる費用の相場はどのくらいでしょうか。
財団法人経済調査会の実例調査では1平方メートル当たり1600円程度との結果が報告されています。これは平均的な概算費用であり、使用する塗料の種類やマンションの規模、外壁の劣化具合により異なります。マンションが低層か中高層か、または超高層かによっても増減します。
国土交通省が「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」で大規模修繕工事の費用の内訳を分析した結果、金額ベースでみた建築系の工事割合は全体の約60%、このうち外壁塗装工事が24.5%を占めることが分かりました。これは全工種で最も高い値です。単純計算すると、総額1億円の大規模修繕工事の場合は建築系費用が約6000万円、このうち外壁塗装工事費は約1470万円となります。さらに、1回目より2回目、2回目より3回目の方が高くなっています。
マンションの外壁塗装の周期
大規模修繕工事の大きな割合を占める外壁塗装工事。どのくらいの周期で実施するのでしょうか。
財団法人経済調査会の実態調査では10~12年周期、国土交通省の調査では14.6年が平均値でした。東京都塗装工業協同組合が示す箇所別の塗り替え時期の目安は、外壁吹付タイルが6年、共用廊下・天井・内壁は8年、生地仕上げ(打ち放し)コンクリートは10年程度です。一棟のマンションでも南側と北側など壁面の向きで耐用年数に差が表れます。塗装工事の実施前には目視や打診による調査を入念に行うことが重要です。
■マンション塗り替え時期の目安
塗装・塗膜の耐用年数に達していなくても、マンションの立地によっては早めに塗り替えを実施した方が良い場合があります。排気ガスや砂塵、ススなどが付着しやすい地域、海岸に近く潮風の影響を受けやすい地域などでは塗装の劣化が早まります。塗装が剝がれた状態のまま放置すると、美観が損なわれるだけでなく雨漏りや構造部分の腐食の原因にもなり、マンションの寿命を縮めることになってしまいます。雨漏りやアルミサッシの白サビ(腐食)は注意信号。修繕積立金の設定額を踏まえ、早めに対応を検討しましょう。
外壁の塗装は紫外線や熱、降雨により劣化する
(出典:国土交通省・持続可能社会における既存共同住宅ストックの再生に向けた勉強会 個別技術シート集)
外壁塗装工事の周期が大規模修繕工事の周期
マンションの外壁塗装工事は周囲に足場を掛けて行う必要があります。この足場を設けるタイミングで他の工事も一緒に行うことにより、大規模修繕工事が合理的かつ効率的なものになります。つまり、外壁塗装の周期が大規模修繕工事の周期。外壁塗装工事の実施計画がマンションの長期修繕計画を策定する上で重要な要素になるのです。
近年、建築資材の研究開発が進み、マンション市場では大規模修繕の実施周期を国土交通省がガイドラインで示す「12~15年」から「18年程度」に延ばす長周期化の取り組みがみられます。具体的には、紫外線と熱、水の3要因で劣化する塗料やタイルの接着剤などを高品質化して耐久性を高めようというものです。
新築マンションの完成後60年の長期修繕計画を策定する際、大規模修繕工事が12年周期ならば工事を5回実施する計算になります。この周期を18年に長周期化した場合、工事は3回で済み、大規模修繕工事に伴う居住者の負担を軽減できます。修繕積立金の削減についても期待がもてます。ただし、高品質の資材は従来のものより高価格になります。長期修繕計画を検討する中でトータルコストをしっかり算定する必要があります。
マンション外壁塗装の種類
塗装工事改修周期の周期は大規模修繕の周期
外壁塗装工事ではまず外壁全体の高圧洗浄を行い、ひび割れなどを補修した後、下塗り・中塗り・上塗りの順で進めます。中塗りと上塗りを複数回重ねて仕上げることもあります。
① 下地補修 コンクリートやモルタルの亀裂や傷など劣化した部分を補修
② 下塗り 乾燥させた後、下地に合わせたシーラー、フィラー、サビ止め用などの下塗り材を塗布
③ 中塗り 下塗りが乾燥したら、付着性や耐久性を向上させる塗料を塗布
④ 上塗り 最後にもう一度、美粧性と耐候性のある仕上げ塗料を塗布
塗装工事が「1回塗り」で終わらないのは、塗料毎に機能が分かれており、それぞれが優れた塗膜性能を発揮するからです。
塗料にはアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、無機系などさまざまな種類があります。昨今では機能のハイテク化が進み、強固で緻密な表面構造の長耐候性塗料や、大気中の排気ガスや粉塵による汚れが付着しにくい超低汚染型の塗料、汚れが付着しても雨で洗い流すセルフクリーニング機能のある無機系塗料、太陽光線を反射する遮熱塗料・断熱塗料などが開発されています。耐用年数が長い高機能な塗料ほど高価格です。外壁の色彩は居住者の好みや周辺環境との調和を考慮して選びましょう。白や黒はモダンな雰囲気に仕上がりますが汚れが目立ちやすく、赤や青などの原色系は紫外線で色褪せしやすいもの。塗り替え後のマンションをイメージしやすいよう、コンピューターによるカラーシミュレーションを行う会社もあります。マンションの立地や経済性、環境を考慮し、最適な外壁塗装工事を計画しましょう。
●積算資料公表価格版塗装工事はこちらをご覧ください。
●遮熱塗料・断熱塗料については下記記事をご参照ください。
【戸建て】節電対策にも効果的! 遮熱機能がある塗料で屋根と外壁を塗り替える|建物の未来のためのお役立ち情報『修繕成功Magazine』|株式会社ヨコソー (yokosoh.co.jp)
マンション外壁塗装工事中の注意点
外壁塗装工事を行う理由や費用などについてご理解いただけたかと思います。それでは、最後に外壁塗装工事期間中の注意点を説明します。
■ベランダの利用制限
エントランスホールに設置した工事用掲示板
外壁塗装工事では塗料の匂いが発生し埃が飛散するため、ベランダの外側からサッシ全体をビニールで覆って養生します。養生期間中は1週間程度ベランダに出られず、洗濯物を干すことができません。エアコン室外機の移動作業の間はエアコンの使用も制限されます。
施工会社は工事スケジュールをマンションのエントランスやロビーに掲出し、いつ、どこを施工するのかお知らせします。「洗濯物干し情報」を戸別に配布したり、インターネットの閲覧システムを提供したりする会社もあります。自宅フロアの施工日程を確認し、工事へのご協力をお願いします。やむを得ない事情がある場合は、日程の調整を現場代理人へご相談ください。
洗濯物干し情報を確認しましょう
●洗濯物情報についてはこちらの記事もご覧ください。
洗濯物が干せないのはなぜですか|よくあるご質問|株式会社ヨコソー (yokosoh.co.jp)
■換気に注意
サッシや室外機を養生
ベランダの外壁塗装工事を行っている間は、緊急時を除きサッシを開けることができません。どうしても匂いが気になる場合や室内の換気をしたい時はどうしたら良いのでしょうか。
工事を行っていない夜間や休工日は、養生をはがさない範囲で窓を開けることができます。施工中でも、工事に支障のない窓なら開けても大丈夫。養生の方法によっては換気扇を使うことも可能です。
マンションの居室には通気口(換気口)があり、室内は常に空気の入れ替えが行われています。塗装工事と反対側の窓や玄関を開けて扇風機で風を送り出すのも効果的です。
なお、足場の組み立てや高圧洗浄の間は危険が伴いますので窓やサッシは絶対に開けないでください。
■ペンキ塗りたて注意
塗装が完全に乾くまでは塗料が皮膚や衣服などに付着しないよう注意してください。外壁塗装は先にお伝えしたように下塗り・中塗り・上塗りの工程があり、それぞれ十分な乾燥時間が必要です。指でそっとふれてみて塗料が乾いているようでも、内部はまだ乾燥していないことがあります。「ペンキ塗りたて」の貼り紙がある間は気を付けるようにしましょう。
万が一塗料が指についても、皮膚がかぶれるなどの危険はありません。ティッシュでふき取る、石鹸で洗う、メイク落としのクレンジングオイルを使うなどの方法できれいに落とすことができます。一方で衣類やカバン、靴などに付着したペンキは落ちません。すぐに流水ですすげば「何もしないよりは良い」という程度で、完璧に落とすことは困難です。
外壁の塗装がよじれたりはがれたりした箇所があったら、現場代理人にお知らせください。全体が乾いた後に再補修します。ご安心ください。
●塗装に関してはこちらの記事もご覧ください。
マンション「鉄部塗装工事」のチェックポイントと居住者様側の注意点とは?|建物の未来のためのお役立ち情報『修繕成功Magazine』|株式会社ヨコソー (yokosoh.co.jp)
■プライバシー・防犯に注意
補助鍵は防犯対策にも
作業員が居室側を向いて作業をしている間は、日中でもカーテンを閉める、ブラインドを下ろすなどの方法でプライバシーを保護しましょう。また、夜間や休工日に足場を伝って侵入する盗難事件が発生しています。サッシが養生されていても普段通りの戸締りをお願いします。サッシを少し開けた状態でロックできる「補助鍵」を貸し出す施工会社もあります。補助鍵は防犯だけでなく換気にも役に立ちます。この機会にご自宅のサッシに取り付けてみてはいかがでしょう。
まとめ
マンションの長寿命化と美化は外壁塗装工事が決め手といって過言ではありません。遮熱塗料で真夏の暑さをやわらげたり、脱臭・抗菌機能のある塗料でゴミ集積所をリフレッシュしたりと、塗装でマンションの価値を向上させることも可能です。費用や立地条件、耐久性などを考慮して、最適な外壁塗装工事を実現しましょう。
【取材協力】
・東京都塗装工業協同組合 マンションの塗り替え | 東京都塗装工業協同組合 (paint.jp)
・NPO法人リニューアル技術開発協会 NPO法人リニューアル技術開発協会 (renewal.or.jp)
大規模修繕工事の品質は塗装工事で決まります。ヨコソーは、創業者・齋藤作蔵の祖先が1600年に静岡県庵原郡富士川町にて〝塗師屋〟を起業して始まった会社。長年蓄積した塗装技術で大規模修繕工事に取り組みます。