マンションの管理組合とは?理事会の役員の業務内容

目次

マンション管理組合とは、その名の通りマンションの共有部分を管理する組合です。マンションの区分所有者全員が組合員として加入し、代表(理事)の合議により運営します。

今回の修繕成功Magazineでは、マンション管理組合の役割と理事になったら何をするのかなど、管理組合員として知っておきたいことをまとめました。管理会社とのパートナーシップや理事会の活動事例も紹介します。

マンション管理組合とは

1 管理規約の実態と運用(横浜市.webp

(出典:横浜市 ヨコハマ分譲マンションポータル)

共用部分を維持管理する組織

マンションの敷地や外壁、屋上、廊下、エレベーターといった共用部分や自転車置き場や植栽などの付属施設は区分所有者全員の共有財産であり、一定のルールに従い協力して管理しなければなりません。そこで組織されるのがマンション管理組合です。

分譲マンションを購入したらこの管理組合に加入することが義務付けられており、組合員としての役割を積極的に果たすことが求められます。1住戸で2人以上の共有名義の場合でも組合員数は1人と定められており(区分所有法第40条)、区分所有者の家族や賃借人として住んでいる人は含まれません。

2 イラスト 管理組合.webp

(出典:公益財団法人マンション管理センター)『買う前に知っておくマンション管理の基礎知識』

管理組合の役員(理事)は区分所有者の中から選出し、総会で決議します。理事の人数は10~15戸につき1人とすることが多いのですが、「最低3人程度、最高20人程度とし、○~○人」という枠により定めることもできます。理事の選び方は立候補や推薦、持ち回り(輪番制)などがあり、任期は1~2年が多いようです。大規模修繕や建て替えを検討する場合は業務の継続性を重視して2年とし、1年ごとに半数を改選することもあります。理事が選任されたら最初の理事会で役職者を互選し業務を分担します。最小限必要な役職は管理組合代表の理事長、理事長を補佐する副理事長、会計業務を行う会計担当理事、そして監査を行う監事(※)です。規模の大きいマンションではこのほか防災訓練担当・修繕担当・植栽管理担当・自治会担当の各理事を置くことがあります。
※監事は組合業務や財産の状況を監査する立場です。理事会に出席して意見を述べることはできますが、決議に加わることはできません。

3 イラスト 持ち回り.webp

(出典:公益財団法人マンション管理センター)『買う前に知っておくマンション管理の基礎知識』

管理組合の業務

管理組合の業務はマンション標準管理規約により次の通り定められています。

1 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
2 組合管理部分の修繕
3 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
4 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
5 適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
6 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
7 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
8  区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
9 敷地及び共用部分等の変更及び運営
10 修繕積立金の運用
11 官公署、町内会等との渉外業務
12 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
13 広報及び連絡業務
 14  管理組合の消滅時における残余財産の清算
15 その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務

これらの業務をすべて居住者が自主的に行う管理組合もありますが、多くはマンション管理会社に清掃やフロントサービス、管理費の出納業務などを委託し、長期修繕計画の作成や建て替えに関する調査などについては、コンサルタント会社やマンション管理士などの支援を得て進めます。

● 管理組合について、こちらの記事「管理組合が無い&機能していないマンションはどうすればいい?」もご覧ください。

次に管理組合の役員(理事)になったら何をするのか見ていきます。

管理組合の役員の仕事

管理組合役員の主な日常業務は、次の三つです。
1. 日常的な清掃、設備の点検、修繕などの維持管理
2. 近隣の騒音や駐車場問題、ペット飼育などの生活管理
3. 管理費の徴収、ルールづくり、総会の開催などの運営管理

維持管理業務
管理会社に委託している場合は管理会社から履行状況の報告を受け、適切に業務を行っているかをチェックします。共用部分に不具合があれば必要な修繕を提案してもらいます。

生活管理業務
居住者から「宅配ボックスを増やしてほしい」「深夜に足音がうるさい」などの相談が寄せられたら理事会で話し合い、対応を決めます。課題と解決策、検討の経緯などは記録し、議事録などですべての居住者に知らせます。

運営管理業務
管理費の滞納が発生した場合に滞納者に書面で催促します。常態化しているのでなければ翌月まで様子を見ますが、長期にわたる滞納の場合は管理組合としての対応が必要です。文書による催促で効果がなければ内容証明郵便による督促、それでも滞納が続く場合は、弁護士等法的処理に詳しい人に相談して対応することになります。滞納額が大きくなると支払いが困難になるため、あらかじめ「○カ月滞納したら督促する」などのルールを決めておくと良いでしょう。

4 イラスト 理事会.webp
(出典:公益財団法人マンション管理センター)『買う前に知っておくマンション管理の基礎知識』

理事会
1~2カ月に1回程度のペースで開催します。管理会社から管理業務の履行状況や会計に関する報告を受け、設備の不具合など修繕に関する提案があれば、予算や長期修繕計画を踏まえて修理方法や発注時期を検討します。

居住者の声や要望に関する協議もここで行います。一定の額を超える大規模な工事の発注や管理規約を大きく変更する場合は、総会に諮り決議します。

通常総会
少なくとも年に1回招集することが区分所有法で定められており、収支決算と事業報告、収支予算と事業計画などを決議します(区分所有法第34条2項、第43条)。役員の選任も総会の場で行います。理事会は総会開催の1カ月前までに議案を決議し、開催2週間前までに総会案内と議案を配布します。一連の作業は管理会社がサポートしてくれるので、内容をよく理解し、スムーズに進行できるよう準備しましょう。大規模修繕工事の契約や管理規約の改定など通常総会を待たずに審議したほうがよい場合は、理事長が臨時総会を招集します。

それでは、管理組合が実際に直面したトラブルの一部をご紹介します。いずれも解決した後はマンションの環境がより良いものになっています。

理事会活動の事例紹介

―ゴミの不法投棄

横浜市内のマンションで、Aさん宅のルーフバルコニーにパンや野菜など食べ物のゴミが散乱していることがたびたびありました。Aさんはカラスが落としたか風で飛ばされてきたかと思い片づけていましたが、ある日、帰宅時に外からマンションをふと見上げたら、ちょうど上階の窓からゴミが投げられ、Aさん宅バルコニーに落ちるのを目撃しました。

驚いたAさんはその住戸を訪問して事情を尋ねましたが、居住者のBさんは高齢でなかなか話がかみ合いません。その後もゴミの散乱が続き、困ったAさんはバルコニーの状況を写真に撮り、管理組合に対応を依頼する文書を提出。理事長は理事会の場で問題を話し合い、Bさんからも話を聞き、市の高齢・障害支援課に相談しました。

その結果、一人暮らしのBさん宅に福祉支援が届くようになり、ゴミの投げ捨てはなくなりました。Aさんが管理組合に相談したことで、Bさんの生活環境も改善された格好です。

―管理費の滞納

横須賀市内のマンションで区分所有者の一人が管理費・修繕積立金を4年半も滞納していることが判明しました。滞納者への督促は気が重いものです。理事長名で何度か手紙を出して催促したものの一向に支払われないため、最終的には弁護士に相談して法的手段に訴え、全額を回収しました。その後の滞納はありません。理事会では滞納を放置していた管理会社のリプレースを決めるとともに、それまで気付かなかった自分たちの無関心を反省。新しい管理会社との契約では廊下の清掃などで自主管理の範囲を拡大しました。マンション管理へのかかわりを増やすと同時に、管理費の削減を実現しました。

―不法侵入への対応

横浜市内のマンションで深夜の時間帯に複数の若者がロビーにたむろするようになり、理事会宛てに対応を依頼する投書がありました。調べてみると、深夜に若者が集まってロビーで過ごし、タバコの吸い殻や菓子のゴミを放置して帰っているようです。居住者なのか外部からの侵入者なのか分かりません。

理事らは防犯カメラの増設を決めた他、夜間に不審者を見かけたら声を掛けようと申し合わせました。居住者にも理事会議事録で状況を報告して声掛けへの協力を求め、掲示板の目立つ場所に『不審者を見たら110番』のチラシを掲出しました。「あそこのマンションの大人は口うるさい」と思わせることが狙いです。その結果、防犯カメラを設置する前に若者のたむろする姿は見られなくなったそうです。

―度が過ぎる居住者への対策

東京都内のマンションに、理事長宅を訪問して長時間にわたり苦情を訴えるクレーマー的な居住者がいて、前理事長は対応に苦慮し困り果てていました。しかし今期の新しい理事長は、設備の不具合について謝罪を求めてやってきたその居住者に「なぜ俺が謝らなくちゃならないんだ」と問い返し、問題点を文書で提出するよう伝えてドアを閉ざしました。共用部分の問題は理事会で対応するべきと考えたのです。その後、その居住者のクレームのトーンは下がり、是々非々での対応が可能になったそうです。

● 理事長の仕事について、こちらの記事「マンションの理事長とは 理事長はいなきゃダメ?素朴な疑問を弁護士の先生に聞いてみた」もご覧ください。

管理組合と管理会社

ここで管理会社との役割分担について整理します。 多くのマンション管理組合では、適正な運営や管理を推進するため、管理業務を管理会社に委託しています。委託するに当たっては管理組合が自主的に委託内容を決めて重要事項説明を受け、区分所有者の合意を得る必要があります。委託範囲を明確化し、管理組合と管理会社それぞれの役割を確認しておきましょう。

5 イラスト 管理会社.webp
(出典:公益財団法人マンション管理センター)『買う前に知っておくマンション管理の基礎知識』

一般的なマンションで管理会社が請け負う主な業務は次の通りです。

1 管理組合の会計状況の把握、報告
2 管理費等の未収納者への督促
3 データベース等によるマンションの情報の管理
4 夜間や休日を含む設備の不具合などへの対応
5 非常事態発生時の対応
6 清掃、保守点検、植栽管理等のチェック
7 管理状況を踏まえた長期修繕計画の作成や見直し
8 居住者情報等の個人情報の適切な管理
9 管理組合運営のサポート

忘れてはいけないのは、維持管理の当事者は区分所有者であり、その代表が理事会であるということです。管理業務は管理会社の仕事とばかりに〝丸投げ〟すると、区分所有者の当事者意識が薄れ、管理組合の機能が徐々に低下し、将来の管理不全につながりかねません。理事会の場では管理会社の定期報告をよく聞き、少しでも疑問に思うことがあれば質問したり自ら勉強したりして、マンション管理に積極的に関わりましょう。管理会社は管理組合をサポートするパートナー。良好な関係維持に努めましょう。

理事会活動の事例紹介

―素人目線によるチェック

理事になったらある程度はマンション管理について勉強することが望まれますが、必ずしも専門知識が必要というわけではありません。一つの例をご紹介します。

数年前、杭基礎が地中の支持層に到達しておらず建て替えを余儀なくされたマンションがあったことを覚えていらっしゃいますか。「建物が傾いているのでは」と最初に疑問を呈したのは、清掃や点検を行っていた管理会社の社員ではなく、一人の理事でした。

理事が自主的にマンション内を巡回していたある日、棟と棟の間の手すりのつなぎ目に少しだけズレがあるのに気づきました。そのズレは上階にいくほど大きくなっていくので、理事は「何かおかしい」と不安に感じ、管理会社に問い合わせました。それが発端で、建物が傾いているという誰も想像しなかった事態が明らかになったのです。〝素人〟だからこそ素朴に不安を感じ、重大事故を未然に防ぐ結果になりました。

8 手すりのずれ1.webp
手すりのズレに気づきますか (2016年2月撮影)

管理組合から脱退できる?

分譲マンションを購入したら組合員として管理組合に加入することが義務付けられており、脱退することはできません。区分所有者全員が当事者意識をもって管理組合の活動に取り組むことが求められます。

一方、理事の就任については事情により引き受けられないこともあり、辞退することは可能です。しかし、輪番制を取り入れた背景には「全ての区分所有者が管理について理解するほうがいいだろう」「それなりに負担になる業務なので順番で持ち回りにしよう」との考えがあります。頑なに拒否するのは他の区分所有者との公平が損なわれ、トラブルになることもあります。固辞するのではなく、理由を説明して別の人に変わってもらえないか相談しましょう。「子どもが就学したら」「単身赴任から戻ったら」など就任できる時期を伝えるのも良いでしょう。

近年では居住者の高齢化などにより、理事のなり手が不足するマンションもあります。そこで2016年の標準管理規約の改正で「第三者管理者方式」が盛り込まれ、管理者に外部の専門家を活用することができるようになりました。
今後、導入が増えていくことも予想されていますが、管理者の権限設定や、別途監事を専任して透明性を高めるなど、管理業務を任せきりにするのではなく積極的に関わっていくことが重要になります。

6 第三者管理者方式導入プロセス.webp

(出典:国土交通省 第三者管理者方式の各論点に関する検討)

理事会活動の事例紹介

―理事長に立候補

横須賀市内の築50年になる高経年マンションで、自ら理事長の役を買って出たCさんに話を聞きました。

Cさんは7年前に同マンションを購入し家族で入居しました。当時はすでに居住者の高齢化が進んで理事のなり手が不足し、維持管理業務のすべてを管理会社にまかせ切りの状態でした。建物は手入れが行き届かず不具合が放置され、大規模修繕工事の検討は着手されず、修繕積立金の長期滞納者もいる。実態を知ったCさんは、「理事会活動を活性化する必要性がある。だれもやらないなら自分がやろう」と決心しました。

「居住者の年齢構成はお年寄り、所謂〝大御所〟が多い。若い世代が大御所に意見するのは遠慮があってむずかしく、かといって大御所にみんなの意見を聞いて取りまとめてもらうのも重労働だ」。そこで、「50代の自分ならちょうど良いのでは」と考えて理事長に立候補。居住者の中から仲間を誘い、理事会の立て直しと大規模修繕工事の検討を始めました。

管理組合運営のイロハを勉強し、区分所有法や裁判の判例を読み込み、弁護士相談に出掛けます。その時間を捻出するためCさんは仕事を辞め、家族の時間も理事会活動につぎ込み、管理会社をリプレースし、とうとう大規模修繕工事も完了させてしまいました。いまは元の職に復帰しましたが、当分、理事長を継続することになっています。

まとめ

理事の仕事は建物の維持管理だけでなく居住者間の意見の調整など、骨の折れることが多々あります。しかし、輪番制であれば数年に一度だけ担当すれば済むと考えてみたらいかがでしょう。理事の役割が回ってきたら、自分たちでマンションライフを快適にしよう!という気持ちで一肌脱いでみませんか。

●修繕成功Magazineでは管理組合に関する記事をご提供しています。こちらもご覧ください。「管理組合」とは?理事になったら何をするの?役割や管理会社との違いを解説

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