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瑕疵(かし)保険とは?加入の必要性や条件、保険の種類ついてわかりやすく解説

これから住宅を購入するという方にとっても、住宅リフォームを検討している方にとっても『瑕疵保険』は非常に重要な保険です。それでは、瑕疵保険について知っておくべきことは何でしょうか。今回は、『瑕疵保険』とは何か、加入の必要性や条件、保険の種類についてわかりやすく解説します。
「瑕疵保険」とは
そもそも「瑕疵(かし)」とは何でしょうか。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、瑕疵とは本来の機能を果たすのに支障がある欠陥や不具合のことをいいます。
柱や基礎といった構造上主要な部分に生じたひび割れや屋根からの雨漏りなど、家を購入したばかりなのに引渡し時には気付かなかった重大な欠陥(=瑕疵)が判明するケースは珍しくありません。このように、引渡し後に瑕疵が見つかった場合に補修を行った事業者に対して保険金が支払われる仕組みを『瑕疵保険』といいます。
なぜ瑕疵保険が必要なのか
新築住宅を購入する場合、引渡し後に契約内容に適合していない瑕疵が見つかった際に売主である事業者は無償で補修しなければなりません。これを「契約不適合責任」(旧称:瑕疵担保責任)といい、新築住宅の場合は引渡しから10年間その責任を負うことが義務付けられています。しかし、10年間の間に売主が倒産するなどして補修が適切に行われず、買主が泣き寝入りしてしまうケースも。実際に2005年に起きた構造計算書偽装問題などをきっかけに2007年に住宅瑕疵担保履行法が施行され、新築住宅の売主に資力確保措置として「瑕疵保険への加入」または「保証金の供託」が義務付けられるようになりました。これにより、万が一売主が倒産した場合でも買主が保険法人に補修費用を直接請求できるため、買主のリスクを分散することが可能になりました。
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「瑕疵保険」と「保証金の供託」の違い
<瑕疵保険>
瑕疵保険は保証金の供託より金額は高くなりますが、工事中に瑕疵がないか建築士などの専門家による検査(インスペクション)を事前に行うため瑕疵を未然に防げることが特徴です。瑕疵があった場合は、売主から保険法人に保険金を請求し、保険法人から保険金が支払われます。ただし、売主が倒産して補修が難しい場合には、買主が直接保険法人に保険金を請求し、支払われた保険金で補修を行うこととなります。
<保証金の供託>
「保証金の供託」とは、新築住宅引渡し後の次の基準日(3月31日・9月30日)までに法務局が管轄している供託所に事業者が保証金を預けておく制度のことです。瑕疵があった場合でも瑕疵担保期間中の10年間は基本的に保証金を取り戻すことはできません。ただし、売主が倒産して補修が難しい場合には、買主は供託所に還付請求を行うことで保証金の還付を受けることができます。
瑕疵保険に加入するための条件と対象となる瑕疵
瑕疵保険に加入するための条件として、「新耐震基準に適合していること」、「インスペクション(建物状況調査)に合格していること」が必要です。基本的に瑕疵保険は検査と保証がセットになっており、瑕疵保険に加入する前に瑕疵が発生するような施工がないか建築士などの専門家によるインスペクションが行われます。
インスペクションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
また、瑕疵保険の対象となるのは、住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。具体的には、柱や基礎、外壁、屋根などが該当します。
出典:国土交通省「まんがでわかる『住宅かし担保履行法』」
瑕疵保険の種類と保証内容
続いて、瑕疵保険の種類とそれぞれの保証内容を見ていきましょう。瑕疵保険は、新築住宅や中古住宅の売買を対象とするものやリフォーム工事を対象とするものなどさまざまな種類があります。
■新築住宅を対象とする「住宅瑕疵担保責任保険」
「住宅瑕疵担保責任保険」とは新築住宅を売買する際に、保証金の供託を行わない場合において売主(不動産会社または建設会社)に加入が義務付けられている瑕疵保険です。
たとえ新築住宅であっても、引渡し後に実際に生活していく中で瑕疵が見つかるケースは多くあります。新築住宅の売主は住宅瑕疵担保責任保険に加入し、10年間は契約不適合責任を負うことが義務化されていますので、引渡し後に瑕疵が見つかった場合も売主に無償で補修してもらえます。
■中古住宅を対象とする「既存住宅売買瑕疵保険」
「既存住宅売買瑕疵保険」とは中古住宅を売買する際に加入する瑕疵保険で、売主(不動産会社または個人)は任意で加入することが求められています。
一般的に中古住宅は、売主が不動産会社の場合は引渡しから最低2年間、売主が個人の場合は3ヵ月以内の瑕疵担保責任期間とする特約をつけるケースがほとんどですが、この「既存住宅売買瑕疵保険」に入ることで最長で5年間の保証を受けることができます。
■リフォーム工事を対象とする「リフォーム瑕疵保険」
「リフォーム瑕疵保険」は一般の方が加入する保険ではなく、リフォーム会社が加入する瑕疵保険です。リフォーム瑕疵保険への加入は任意となっており、リフォーム工事が終わった後にリフォームを実施した部分に瑕疵が見つかった場合、リフォーム会社に補修を請求することができます。
保証期間はリフォーム内容により異なりますが、一般的に柱や梁、屋根などの構造耐力上主要な部分については保証期間が5年間となります。一方で、クロスの張り替えや水回りの交換などは1年間が保証期間となります。
なお、リフォーム瑕疵保険を活用するためには、リフォーム会社が瑕疵保険の登録事業者である必要があります。登録事業者は一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のホームページよりご確認いただけます。リフォーム工事を検討している場合はリフォーム瑕疵保険に加入しているリフォーム会社を選ぶと安心でしょう。
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■大規模修繕工事を対象とする「大規模修繕工事瑕疵保険」

「大規模修繕工事瑕疵保険」とは大規模修繕工事を対象とする瑕疵保険で、大規模修繕工事の施工会社が任意で加入します。大規模修繕工事後に工事を実施した部分に瑕疵があった場合、施工会社は補修を行わなくてはならず、補修を行った施工会社には生じた損害について保険金が支払われます。
保証期間は工事内容により異なり、屋上や外壁など雨水の浸入を防止する部分については5~10年間、手すり等の鉄部については2年間となる場合が多いです。タイル剥落に係る特約として5年間の保証などもあります。
大規模修繕工事を検討している場合は、事前に施工会社が瑕疵保険の登録事業者であるか確認しましょう。登録事業者は一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のホームページより確認が可能です。大規模修繕工事を実施する場合は、瑕疵保険が活用できる施工会社を選ぶことをおすすめします。
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瑕疵保険の利用方法
瑕疵保険は主に事業者が加入する保険ですので、住宅の購入者やリフォームの発注者の方は特に手続きは必要ありません。引渡し後に瑕疵があった場合、補修を行った事業者は生じた損害に対して保険金が支払われます。ただし、売主やリフォーム会社などの事業者が倒産してしまった場合は、自分で保険法人に保険金を請求する必要があります。
住宅の購入やリフォームなどは大きな買い物ですので、引渡し後に瑕疵が見つかった場合も保険金で補修してもらえるのは安心です。万が一、事業者が倒産してしまったとしても補修費用を請求できるというのは大きなメリットではないでしょうか。
万が一に備える瑕疵保険
今回は「瑕疵保険」の必要性や条件、保険の種類などについて詳しく解説しました。
事業者は住宅の売買後やリフォーム工事後などに瑕疵が見つかった場合でも、保証期間内であれば無償で補修を行う責任があります。瑕疵保険を活用することで、瑕疵の補修によって生じた損害に対して事業者に保険金が支払われ、事業者が倒産した場合でも保険金を請求することができるためトラブルが発生した場合でも深刻化を防ぐことができます。
住宅に瑕疵(欠陥)がない限り一般の方が直接関わることは少ないですが、瑕疵保険について知っておくことで、安心して長く住み続けていくことができるのではないでしょうか。